#08

ドリームフード

ある日、メロウキッチンに見覚えのある客が訪れた。
人形星の長老、老紳士でした。メイプルは席に着く前に尋ねました。マフィンの物語を、母の人形が辿った運命がマフィンにも繰り返されるのかを。
老紳士はしばらく黙っていました。そしてゆっくりと口を開きました。

母君の人形が消えたのは星の摂理でした。しかし、あなたには別の可能性があるかもしれません。

長老はずっと古文書を調べていました。
マフィンの使命が終わる条件はひとつ。メイプルが完全にひとりで立てるようになる瞬間。長老が見つけた仮説は、それを覆すものでした。
メイプルがマフィンを必要とする状態が永遠に続けば、消滅の条件そのものが成立しません。

可能性でした。確信ではありません。それでも、何もないよりは違っていました。

そして長老はもうひとつのことを切り出しました。
町にもうすぐ危機が訪れる、と。地球と人形星をつないでいた信号機が過負荷で壊れたのです。人形星に流れていた幸せのエネルギーが行き場を失って散り散りになり、人形たちは存在の根幹を失って透明になりはじめました。
地上の人々も同じでした。童心の供給源を失った町の人たちが、ひとり、またひとりと無気力になっていきました。

長老が頭を悩ませていたとき、一つの手がかりを見つけました。
メイプルとマフィンが一緒に作ったドリームフード。
それを食べた人たちが忘れていた人形との思い出を取り戻し、再び生気を得たのです。

この問題を解決することが、マフィンを救う道になるかもしれません。

メイプルは老紳士の言葉を静かに聞いていました。
確かなことは何もありません。けれど初めて、何もできないという思いが消えていました。

これから一緒に紡いでいく物語が始まります。